26 Apr
Shuqiu Wang 博士が 2024 Nicholas Kurti 賞を受賞
オックスフォード・インストゥルメンツは、University of Bristol 物理学助教のShuqiu Wang 博士が、2024 年 Nicholas Kurti 賞の受賞者に選ばれたことをお知らせいたします。
この賞は、mK 温度における p 波トポロジカル超伝導体の電子構造の原子スケールでの可視化と同定に関する Wang 博士の研究を称えるものです。Wang 博士の研究成果は、希釈冷凍機と走査型トンネル顕微鏡を組み合わせた最先端の実験技術により、非従来型超伝導の研究を進展させたものです。
Wang 博士は、次のように語っています。「Nicholas Kurti 賞の著名な受賞者の仲間入りをすることができ、感激するとともに光栄に思います。この賞は、実験物理学の科学的側面と工学的側面の両方を検証してくれる心強いものです。これまで一緒に研究してきた優秀で聡明な科学者たち、私の指導教官や同僚たちに深く感謝しています。私がこのような素晴らしい賞を受賞できたのも、その指導教官のご指導や同僚たちの協力のおかげです」。
Wang 博士の研究は、この分野に多大な貢献をしてきました。博士の研究はトポロジカル量子物質の分野に強いインパクトを与え、前例のない量子状態、すなわちトポロジカル対密度波であるスピン三重項超伝導体 UTe2 の同定というブレークスルーを成し遂げました。また、軌道秩序における博士の研究は、高温超伝導の統一的な説明への扉を開きました。
オックスフォード・インストゥルメンツ・ナノサイエンスのMatt Martin(マネージングディレクター)は、次のように述べています。「傑出した若手科学者の研究を支援することは常に光栄なことですが、Wang 博士も例外ではありません。希釈冷凍機と走査型トンネル顕微鏡の開発に関する彼女の研究は、特に興味深いものでした。博士の低温物理学分野への貢献と、量子コンピューティングのような技術開発への示唆は、今年の受賞者に非常にふさわしいものです」。
Nicholas Kurti 賞の目的は、ヨーロッパの低温・強磁場分野で活躍する若手科学者の革新的な研究を奨励・表彰することです。
2024年のNicholas Kurti賞選考委員会は、Lancaster大学のGeorge Pickett教授を委員長とし、Rolf Haug教授(Universität Hannover)、Vladimir Dmitriev教授(P L Kapitza Institute、Moscow)、Dominik Zumbühl教授(University of Basel)、Silviano De Francheshi博士(Institute for Nanosciences and Cryogenics、Grenoble)らで構成されました。
Wang 博士は、主要な学術機関においていくつかの重要な役職を歴任してきました。2019年にポスドク研究員として University of Oxford に着任し、上級ポスドクとして2020-2021年のパンデミック時のグループ運営を統括しました。Cornell University の客員留学生として、彼女のチームは Andreev トンネル効果を定量化するための定量理論モデルを開発しました。2023年12月より助教として、University of Bristol の Visualizing Quantum Matter Research Group を率いました。これまでに、Wang 博士は、『Nature』、『Science』、『Nature Materials』、『Nature Communications』などの学術誌に、11本の筆頭著者論文発表し、4本の責任著者になっています。また、APS March Meeting、Harvard University、MIT、Berkeley College などの主要機関や国際会議において、10 回以上の招待講演を行っています。
オックスフォード・インストゥルメンツは、博士課程を修了してから永続的な研究職に就くまでの間に、多くの研究者にとって重要で困難な時期があることを認識しています。そのため、オックスフォード・インストゥルメンツ社は、革新的な研究を行っている個人に対して、金銭的な援助と研究活動の促進という両面から支援を行いたいと考えています。この賞は、Oxford University の Clarendon Laboratory における超低温物理学の卓越した業績で知られる Nicholas Kurti 教授(1908-1998)にちなんで名づけられました。
これまでの受賞者には、Samuli Autti博士(Lancaster University)、Angelo di Bernardo教授(University of Konstanz)、Alexander Grimm博士(Paul Scherrer Institut)、Rebeca Ribeiro-Palau博士(Centre de Nanosciences et de Nanotechnologies (C2N))、Landry Bretheau博士(Institut Polytechnique de Paris)などが名を連ねています。