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September 4, 2024

WITec Paper Award 2024が優れた論文を表彰

WITec Paper Award 2024は、英国、オランダ、韓国の研究者らの、優れた科学論文が受賞

WITec Paper Awards 2024は、細胞生物学、バイオミネラリゼーション、単一光子発光材料におけるそれぞれの研究に対して、英国、オランダ、韓国の科学者らに贈られました。

今回は、WITec(ビーテック)の顕微鏡で得られたデータを含む数多くの優れたエントリーのうち、3件が受賞しました。オックスフォード・インストゥルメンツ社WITecは、受賞者の皆様を祝福するとともに、幅広い科学分野から魅力的な作品を送ってくださった参加者の皆様に感謝いたします。審査員は、この伝統を継続し、来たる2025年の論文賞にも多くの優れた応募があることを楽しみにしております。

  • 論文賞 金賞Vernon LaLone, Aleksandra Aizenshtadt, John Goertz, ..., Steven Ray Wilson, Stefan Krauss, Molly M. Stevens (2023) Quantitative chemometric phenotyping of three-dimensional liver organoids by Raman spectral imaging. Cell Reports Methods 3(4): 100440. DOI: 10.1016/j.crmeth.2023.100440

    「ラマンイメージングによる3次元肝臓オルガノイドの定量的ケモメトリック表現型解析」

  • 論文賞 銀賞Robin H.M. van der Meijden, Deniz Daviran, Luco Rutten, X. Frank Walboomers, Elena Macías-Sánchez, Nico Sommerdijk, Anat Akiva (2023) A 3D Cell-Free Bone Model Shows Collagen Mineralization is Driven and Controlled by the Matrix. Advanced Functional Materials 33(42): 2212339. DOI: 10.1002/adfm.202212339

    「3D無細胞骨モデルが示す、マトリックスにより駆動・制御されるコラーゲンの石灰化」

  • 論文賞 銅賞: Michael Neumann, Xu Wei, Luis Morales-Inostroza, Seunghyun Song, Sung-Gyu Lee, Kenji Watanabe, Takashi Taniguchi, Stephan Götzinger, Young Hee Lee (2023) Organic Molecules as Origin of Visible-Range Single Photon Emission from Hexagonal Boron Nitride and Mica. ACS Nano 17(12): 11679-11691. DOI: 10.1021/acsnano.3c02348

    「六方晶窒化ホウ素およびマイカからの可視域単一光子源としての有機分子」


過去の受賞論文のリストは、WITec Paper Awardの公式ウェブサイトをご覧ください。

論文賞 金賞:生物学的3Dモデルシステムの特性評価

生物学や医学の研究では、臓器全体を模倣し、試験管内の (in vitro) 多細胞性における分子機構を研究するために、オルガノイドのような3Dモデルを用いることが増えています。英国インペリアル・カレッジ・ロンドン (Imperial College London) のVernon LaLone氏とその同僚、オスロ大学 (University of Oslo) の共著者らは、このような複雑な3D構造を詳細に評価するためのラマンイメージングの可能性を見事に提示し、これにより今年の論文賞金賞を受賞しました。

著者らは、初代ヒト肝細胞およびヒト人工多能性幹細胞 (hiPSC) の双方から作製したオルガノイドにおいて、複数の生物学的化合物の絶対濃度を定量する方法を開発しました。この方法を用いると、従来の染色技術では一般に可視化が困難な化合物も効率的に検出することができました。新たに確立された定量的ラマンイメージング法により、初代オルガノイドおよび幹細胞由来オルガノイドのタンパク質、核酸、不飽和脂質の量の違いを識別することができました。さらに、肝臓に作用する薬物にオルガノイドをさらすと、オルガノイドの組成が変化することもわかりました。同時に、薬物の代謝および組織への蓄積も追跡することができました。

著者らは、この定量的ラマン法を、細胞およびサブ細胞の高い分解能で組織の分子特性評価を行う強力なツールとして紹介しました。彼らによると、定量的ラマンイメージングは、「3D生物学的標本の定量的ラベルフリー調査を開発する上で重要なステップを構成する」ということです。

WITec 論文賞 金賞を受賞された皆様
WITec 論文賞 金賞を受賞されたVernon LaLone博士(左の写真)。英国インペリアル・カレッジ・ロンドン (Imperial College London) の研究グループを代表し、オックスフォード大学 (University of Oxford) のStephen McGurk代表から賞を授与されるDame Molly Stevens教授(右の写真)。
論文賞 銀賞:生物学的3Dモデルシステムの特性評価

自然界は、複数の長さスケールで物質を制御して形成することによってのみ達成できる、驚くべき(機械的)特性を示す多種多様な物質を作り出すことができます。その代表例が骨組織のバイオミネラリゼーションであり、高度に組織化された有機構造の中にミネラルが統合されるプロセスです。 

今年の論文賞銀賞を受賞したオランダのナイメーヘン (Nijmegen) にあるラドバウド大学医療センター(Radboud University Medical Center, Radboudumc)のRobin H.M van der Meijden氏および彼の研究グループは、骨のバイオミネラリゼーションを研究し、このプロセスに不可欠な成分および構造を決定しました。この研究では、無細胞のin vitroシステムにおいて、骨の主要構成要素であるオステオンの再構築を実証しました。生成されたオステオンを偏光分解ラマン顕微鏡 (polarization-resolved Raman microscopy) で分析したところ、無細胞環境下でもその化学的・階層的な3次元構造が再現されることが示されました。これまでの考えとは異なり、細胞の活動ではなく、細胞外マトリックス (ECM, extracellular matrix) の構造および組成によって、有機マトリックスへのミネラルの浸潤を制御することができました。

結論として、確立された無細胞in vitroシステムは、骨形成のプロセスに関する貴重な知見を提供するとともに、マトリックスの石灰化に関する今後の研究に大きな可能性をもたらすツールとなります。Robin van der Meijden氏はこれについて「石灰化に関連する疾患のメカニズム研究にも有望である」と述べています。

WITec 論文賞 銀賞を受賞された皆様
オランダのナイメーヘンにあるラドボウド大学医療センターのRobin van der Meijden氏(中央)、共著者のNico Sommerdijk教授(左)およびAnat Akiva博士(右)に、論文賞銀賞が授与されました。
論文賞BRONZE:2次元材料における単一光子エミッター

2024年度の論文賞銅賞受賞者であるMichael Neumann氏、Xu Wei氏および韓国・水原 (Suwon) にある成均館大学ナノ構造物理統合研究センター (Center for Integrated Nanostructure Physics, Sungkyunkwan University) の同僚らは、ドイツおよび日本のパートナーとともに、量子光学のトピックに深く切り込みました。彼らの研究対象は六方晶窒化ホウ素 (hBN, hexagonal boron nitride) であり、量子技術にとって非常に興味深い単一光子エミッタ― (SPE, single-photon emitter) を特徴とする、熱心に研究されている層状材料です。

これらのSPEはこれまで、hBN結晶格子における発光点欠陥に起因するとされてきましたが、著者らは今回の研究で、この帰属に疑問を呈しました。hBNサンプルのフォトルミネッセンス活性を研究することにより、観察されたSPEの多くがhBNによってホストされているのではなく、実際にはhBNおよびその基板の間の界面に捕捉された有機溶媒などの有機処理残留物から生じる蛍光分子であることを実証しました。これを裏付けるように、有機汚染のないhBNサンプルにはSPEが含まれていませんでした。さらに、同じクラスのSPEは、異なる層状絶縁体であるフルオロゴパイト雲母のシート下でも形成されました。

hBNで観察された多くのSPEの起源に関する新たな理解について、Michael Neumann氏およびXu Wei氏は、「我々の研究によってもたらされた視点の変化は、hBNベースの量子フォトニック技術の開発を加速させるでしょう。それは、新たな量子技術における多くのアプリケーションで要求されるように、蛍光体種の合理的な選択およびその制御された配置へと、制御されない発光体生成からのシフトを導くことによってもたらされます」と述べています。

WITec 論文賞 銅賞を受賞された皆様
論文賞銀賞が授与された皆様。左の写真: Michael Neumann博士(右)およびオックスフォード・インスツルメンツのStefan Gomes da Costa氏。右の写真、左から右へ: 韓国、水原にある成均館大学ナノ構造物理統合研究センターのYoung Hee Lee教授、共著者のXu Wei 博士、グループメンバーのDebottom Daw氏およびオックスフォード・インストゥルメンツのJames Kim氏。
WITec Paper Award 2025 の応募受付を開始しました

WITec審査委員会は WITec Paper Award 2025 への多くの優れた論文のご応募をお待ちしております。対象論文は、2024年に査読付きジャーナルに掲載されたもの(印刷またはオンライン)で、WITecの装置を用いて得られた結果を含むものです。論文は2025年1月31日までにPDFファイルで papers@WITec.de へお送りください。

WITec(ビーテック)について

WITec は、3D ラマンイメージングと相関顕微鏡のパイオニアであり、スピード、感度、分解能に妥協のない製品ラインナップで、業界をリードし続けています。ラマン顕微鏡、AFM 顕微鏡、SNOM 顕微鏡、およびビーテックが開発した Raman-SEM(RISE)装置は、拡張可能なモジュール式のハードウェアおよびソフトウェアにより、化学および構造特性評価において特定の課題に合わせてカスタマイズすることが可能となっています。

研究、開発、生産はドイツ・ウルム市のビーテック本社(WITec GmbH)で行われており、ビーテック製品の販売・サポートネットワークは世界のあらゆる地域で確立されています。ビーテックはオックスフォード・インストゥルメンツ・グループの一員であり、その幅広い事業ポートフォリオにラマン顕微鏡の技術的リーダーシップをもたらします。


本記事に関するお問い合わせ先

オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社
ビーテック事業部

〒141-0001 東京都品川区北品川5丁目1番18号
住友不動産大崎ツインビル東館
Tel: 03-6744-4707 Email
URL:https://raman.oxinst.jp

WITec GmbH
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E-mail: press@WITec.de
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